あらためて確認しよう!証券口座の2つの「特定口座」の違い

2020/11/28 土曜日

証券会社などで新しく口座開設する時には、「特定口座」を利用するかを決める必要があります。利用しない場合には「一般口座」で取引を行いますが、利用する場合には2つある特定口座のどちらかを選択することになります。

ではこの2つの特定口座にはどのような違いがあるのでしょうか?利益が出た場合の手続き方法などが変わりますので、今回はあらためて2つの特定口座の違いなどについてお伝えします。

特定口座は2種類ある

「一般口座」で取引をすると、1年間に口座内で取引をした損益をご自身で計算して、翌年に確定申告をしなければいけません。手続きや管理が複雑になる場合がありますので、このような手間を省き申告や手続きを簡略化できるのが「特定口座」です。

特定口座は、証券会社などで新しく口座開設をする時に一般口座のほかに開設できる口座で、次の2つの口座のうちどちらかを選ぶことができます。

1.源泉徴収なし口座(簡易申告口座)

こちらを選ぶと、特定口座内で行った取引の損益は一般口座の所得と区分して計算されます。1年間の取引の計算は証券会社などが行い、「特定口座年間取引報告書」が毎年交付されます。

源泉徴収なし口座の場合、原則として翌年に確定申告が必要ですが、一般口座での確定申告のようにご自身で複雑な計算を行って作成する明細書の提出は必要ありません。

この報告書が明細書代わりとなりますので、一般口座と比較して簡易的に確定申告をすることができます。

2.源泉徴収あり口座(源泉徴収口座)

こちらを選ぶと、口座内で取引をするたびに「損益通算」を自動的に行ってくれます。

売却益が出た場合には所得税・復興特別所得税・住民税合わせて20.315%が源泉徴収されます。

逆に損をしてしまった場合には、それまでに源泉徴収された税金の還付を口座内で行ってくれます。

1年間の取引内容は同じく交付される「特定口座年間取引報告書」で確認できますが、売却益が出ている場合には源泉徴収ですでに税金を払っていますので、原則として翌年に確定申告をする必要はありません。

また、株式の配当金や投資信託の分配金を源泉徴収あり口座で受け取ることもできます。証券会社などに「源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書」を提出すれば源泉徴収後の配当金や分配金を受け取ることが可能です。

なお株式の配当金や投資信託の分配金は「配当所得」となりますが、1年間の株式や投資信託などの売却で「譲渡損」が出た場合には、この譲渡損と配当所得とを口座内で「損益通算」してくれます。

仮に1年間の譲渡損が50万円、配当所得が100万円だった場合、配当所得の源泉徴収額は100万円×20.315%=20.315万円です。

これを損益通算して、配当所得100万円-譲渡損50万円=配当所得50万円とすることができ、実際の源泉徴収額は50万円×20.315%=10.1575万円となります。

結果、多く支払った源泉徴収額20.315万円-10.1575万円が口座内に還付され、税負担を少なくすることができます。

源泉徴収あり口座は源泉徴収や損益通算をしてくれる

このように源泉徴収あり口座は、口座内で源泉徴収や損益通算を行ってくれるため、税金の計算や申告の手間を省くことができます。

ただし注意点もあります。上の例は「譲渡損<配当所得」だったので譲渡損の全額を配当所得と相殺できました。では「譲渡損>配当所得」だった場合に譲渡損が残ってしまった場合はどうすれば良いのでしょうか?

このようなケースでは、「一般口座」や「他の証券会社の口座」などに譲渡益がある時は、確定申告をすることで損益通算ができます。

さらに損益通算をしてもなお譲渡損がある場合や、そもそも損益通算をするものが無い、という場合には、同じく確定申告をして「譲渡損失の繰越控除」の適用を受けることができます。

譲渡損は、損失が出た年の翌年以降3年間繰り越すことができ、翌年以降の譲渡益や配当所得から控除ができます。これによって翌年以降の源泉徴収税額を抑えることができますが、譲渡損が残っている間は毎年確定申告が必要です。

・国税庁HP:上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm

今回お伝えしたように特定口座は、原則としてご自身で確定申告を行う「源泉徴収なし口座(簡易申告口座)」と、原則として確定申告をする必要が無い「源泉徴収あり口座(源泉徴収口座)」の2つがあります。

また特定口座を利用する場合には、口座開設時にどちらかを選ぶ必要がありますが、翌年以降は毎年どちらの口座を使うかを選ぶこともできます。

手間がかからないのは源泉徴収あり口座ですが、2つの口座はそれぞれメリット・デメリットがありますので、こちらについては別の機会にお伝えしようと思います。