上場株式や投資信託の相続税評価はどのように行う?

亡くなった方が保有していた財産の中に株式や投資信託があり、これらを相続する場合があります。他の財産と同様に相続税評価額を計算することになりますので、今回は株式や投資信託の相続税評価の方法をお伝えします。

相続税評価の方法は財産によって異なる

相続税を計算する際は亡くなった方の財産について「相続税評価額」を算出していきますが、その評価の方法は財産の種類によって異なります。預貯金は相続発生時点の残高(時価)、土地は時価の約8割である「路線価」をもとに、自宅等の建物は時価の約7割である「固定資産税評価額」をもとに評価額を算出します。

時価で評価する財産や時価よりも低い額で評価する財産など、財産ごとに評価額を計算して相続財産の総額が決まります。

株式の相続税評価額

今回は株式のうち「上場株式」の相続税評価額についてお伝えします。「自社株」等の相続税評価の方法は今回お伝えする内容とは異なりますのでご了承ください。

上場株式は「時価」で評価をするのが基本です。ただし株価は常に変動していますので、亡くなった日(課税時期)の終値(最終価格)をもとに評価を行います。さらに亡くなった日の終値よりも、次の3つの価格のいずれかが低くなる場合には、その最も低い価格を評価額とすることもできます。

・亡くなった日の月の毎日の終値の平均額
・亡くなった日の月の前月の毎日の終値の平均額
・亡くなった日の月の前々月の毎日の終値の平均額

このように亡くなった月、その1か月前、その2か月前のそれぞれ1か月間の終値の平均額が、亡くなった日の終値よりも低ければ、その中で一番低い価格で評価しても良いことになっています。なお、亡くなった日が平日以外で株価の終値が無い場合や、その株式に権利落等がある場合には、月の平均額や終値に一定の修正をして価格を計算します。

このように計算した価格に株数をかければ、株式の相続税評価額が算出できます。

投資信託の相続税評価額

投資信託は株式のように終値の平均額を計算することはせず次のような計算をするため、より時価に近い方法で評価されます。亡くなった日の基準価額から、その日に売却した場合の税金と手数料等を控除した額が評価額となります。

【課税時期の基準価額×口数-課税時期に解約等をした場合にかかる源泉徴収税額-(信託財産留保額+解約手数料)】

上場株式や投資信託の相続税評価額はこのように算出し、他の相続財産と合わせて全体の相続税評価額が計算され、相続税がかかるかが決まります。

評価額の計算は誰が行う?

株式や投資信託を相続する人がこのような相続税評価額の計算を行うと手間や時間がかかりますので、亡くなった方が口座開設をしていた証券会社に依頼をして、株式の価格や投資信託の基準価額を計算してもらうこともできます。

書類を発行してもらうこともできますので、相続税の申告を税理士に依頼する場合には、これらの書類を渡せば評価額の計算を行ってもらえます。

なお、株式や投資信託を相続する時には、亡くなった方が株式や投資信託を保有していた証券会社に口座を持っている必要がありますので、相続人の方が持っていない場合には口座開設をした上で手続きを進めます。

また手続きの際は、株式や投資信託を遺言の内容に沿って相続したのか、遺産分割協議によって相続したのか等によって必要書類が変わります。遺言書や遺産分割協議書をはじめ、戸籍謄本や印鑑証明書などを提出しますが、証券会社に問い合わせれば必要書類等を案内してもらえます。

今回お伝えしたように、株式や投資信託を相続する場合には、それぞれ違った方法で相続税評価額を算出します。また株式の場合は4つの価格の中で一番低い価格をもとに評価額を計算することができます。

・国税庁:上場株式の評価
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm

・国税庁:貸付信託・証券投資信託の評価
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4644.htm

・国税庁:法令解釈通達 株式及び出資
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/01.htm