今後の年金制度はどうなる?「受給開始時期の選択肢の拡大」

2020年(令和2年)5月29日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)」が成立し、同年6月5日に公布されました。2022年(令和4年)以降の年金制度を改正するための法律で、大きく4つの項目が改正されます。今回は3つめの改正内容についてお伝えします。

【改正内容その3】受給開始時期の選択肢の拡大

受給開始時期はどのように選択できる?

現行の制度では、公的年金は原則65歳から受給できます(年金支給開始年齢)。ただし、「改正内容その2」でお伝えしたように、男性は1961年(昭和36年)4月2日、女性は1966年(昭和41年)4月2日「以前」に生まれた方は、年齢によって60歳~64歳から「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)」が受け取れます。

この「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)」と「老齢基礎年金」について、希望をすれば60歳~70歳の間で受給開始時期を選択できます。65歳より早く受給する(繰上げ受給)場合には本来よりも減額された年金を、65歳よりも遅く受給する(繰下げ受給)場合には本来よりも増額された年金を一生涯受け取ることになります。

今回の改正では、この受給開始時期が現行の70歳から75歳に引き上げられます。理由としては、「高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう」に、繰下げ制度をより柔軟で使いやすいものにするためとされています。

この改正は2022(令和4年)年4月から適用されます。2022年(令和4年)4月1日以降に70歳に到達する人「1952年(昭和27年)4月2日以降に生まれた人」が対象となります。なお、現在65歳からとなっている「年金支給開始年齢」は引き上げられません。

繰上げ、繰下げすると受給額はどうなる?

繰上げ・繰下げ受給は1か月単位で行うことができます。それぞれ減額率・増額率が決まっていて、繰上げ受給の場合は1か月あたりマイナス0.5%の減額率繰下げ受給の場合は1か月あたりプラス0.7%の増額率となっています。

現行では、最大の減額率は60歳まで繰上げた場合の30%最大の増額率は70歳まで繰下げた場合の42%となっていますが、受給開始時期が引き上げられたことで、最長の75歳まで繰下げると増額率はプラス84%になります。

なお減額率は、2022年(令和4年)4月1日以降に60歳に到達する人を対象に、1か月あたりマイナス0.4%に改正される予定です。この改正で最大の減額率はマイナス24%となり、現行の30%から6%少なくなります。

今回お伝えした年金の受給開始時期の繰上げ・繰下げですが、実際に年金を受け取る時期になった時にどのように働いているのか、何歳まで働くのか、また貯蓄額なども考慮して、どのように受け取るかを考えることになると思います。

まずは本来受け取れる年金額を試算して、繰上げ・繰上げをした場合には年金額がどのようになるかを確認してみてはいかがでしょうか。