セルフメディケーション税制が延長!~令和3年(2021年)度税制改正~

1年間に支払った医療費が一定額を超える場合には、その翌年の確定申告で「医療費控除」を受けることができます。

ただし年間の医療費が10万円を超えるなど、その年の医療費の負担が高額にならないと活用できません。

そこで創設されたのが医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」ですが、令和3年(2021年)度税制改正でこの制度の適用期限が延長されました。

今回は、セルフメディケーション税制がどのような制度なのかをあらためておさらいするとともに、従来からの変更点などについてもお伝えします。

セルフメディケーション税制のおさらい

医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」は、ご自身や配偶者、生計を一にする親族が1年間に支払った「スイッチOTC医薬品」の購入費用が一定額を超える場合に、その超えた金額が所得から控除されます。

計算式は、

1年間のスイッチOTC医薬品購入費の合計額-12,000円

です。

ちなみにスイッチOTC医薬品とは、お医者さんが処方する医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアなどで購入できるように転用された医薬品のことです。

1年間で12,000円以上、1か月あたり1,000円以上の医薬品を購入すれば、その超えた金額が医療費控除の対象となりますので、通常の医療費控除よりもハードルは低くなっています。

ただし、セルフメディケーション税制で医療費控除できる金額の上限は88,000円となっています。

また、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できませんので、

医療費が多くかかった年は通常の医療費控除、そうでない年はセルフメディケーション税制、といった使い分けをすることで、所得控除を受けることができます。

セルフメディケーション税制の2つの要件と変更点

このセルフメディケーション税制を活用するには、次の2つの要件を満たす必要があります。

1つは確定申告する人が、健康の保持増進及び疾病の予防への「一定の取組」を行っていること、もう1つは「スイッチOTC医薬品」を購入すること、です。

セルフメディケーション税制は平成29年(2017年)1月1日から令和3年(2021年)12月31日の間の購入費が対象となっていましたが、

令和3年(2021年)度税制改正で適用期限が5年間延長され、さらに、この制度の対象となる医薬品の範囲の見直しが行われる予定です。

1.「一定の取組」の範囲(変更ナシ)

会社等で行う健康診断や、インフルエンザの予防接種など、次の6つが該当します。

例えば、ご家族のだれかが会社の健康診断を受けていれば、その人とそのご家族が1年間に購入した医薬品などの費用がセルフメディケーション税制の対象となります。

(1)健康保険組合、市区町村国保等が実施する健康診査【人間ドックや各種健診・検診等】

(2)市区町村が健康増進事業として行う健康診査【生活保護受給者等を対象とする健康診査】

(3)予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】

(4)勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】

(5)特定健康診査(メタボ検診)、特定保健指導

(6)市町村が健康増進事業として実施するがん検診

2.「スイッチOTC医薬品」の範囲(変更アリ)

現在は、医薬品の箱などにマークがついていたり、レシートに印がついていたりするので、セルフメディケーション税制の対象となる商品や金額がわかるようになっています。

このような表記は今後も変わらないと思いますが、対象となる医薬品の範囲が見直される予定です。

具体的な内容はまだ決まっていないのですが、

「スイッチOTC医薬品から効果の薄いものを対象外とし、とりわけ効果があると考えられる薬効(3薬効程度)について、スイッチOTC成分以外の成分にも対象を拡充」

するとしています。

対象範囲が広くなり、多くの人が活用できるような改正内容になれば良いのですが。

確定申告の手続きも簡素化される?

セルフメディケーション税制の適用を受けるには確定申告が必要です。

ちなみに現状では確定申告の時に「セルフメディケーション税制の明細書」と、健康診断などの結果通知表を確定申告書に添付し、明細書には購入した薬局名や医薬品名、支払った金額などをレシートから記載します。

ただし今回の改正で、「手続きの簡素化を図る」とされていますので、今よりも簡単に手続きができるようになるかもしれません。

セルフメディケーション税制は、「健康の維持増進及び疾病の予防への取組」を行っている人に対しての所得控除の制度となります。

ご自身やご家族の健康を守るために購入した医薬品の費用が、確定申告を行うことで所得控除の対象となる場合がありますので、

今後医薬品を購入する場合には、セルフメディケーション税制の対象となるのかを確認してみてはいかがでしょうか。