「教育資金一括贈与」の非課税制度の延長・見直し~令和3年(2021年)度税制改正~

今回の税制改正では、教育資金を一括贈与した場合の非課税制度の適用期間が2年延長され、令和5年3月31日までの贈与について適用できるようになりました。

この非課税制度は通常とは贈与の方法が異なりますので、今回は非課税制度の概要と見直しの内容を合わせてお伝えします。

教育資金一括贈与の非課税制度の概要

通常の贈与は、贈与者(贈与する人)と受贈者(贈与してもらう人)が贈与契約を行い、例えば現金であればお互いの口座間で受け渡しを行いますが、

この非課税制度は金融機関と信託契約をして「教育資金口座」を開設し、その口座を通じて贈与を行う制度となっています。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm

・国税庁:直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

この口座を通じての贈与であれば一括で1,500万円までが非課税となり、平成25年(2013年)から導入された制度です。

親や祖父母(直系尊属)が、「前の年の所得金額が1,000万円以下」の30歳未満の子や孫などへ行う贈与が対象となります。

この制度を使った贈与の一般的な流れは、

・金融機関と信託契約、
口座開設(子や孫名義)

・親や祖父母が口座へ教育資金を一括贈与

・教育資金の支出(一度は立替)

・金融機関に領収証などを提出

教育資金の払い出し

となります。

金融機関や支出の内容によっては立替を行わずに払い出しできる場合もありますが、基本的には一度教育資金を支払い、その後にかかった費用分を払い出してもらう流れとなります。

このように支出があるたびに口座から贈与を受け、残高がゼロになった時点で契約が終了となります。

なおこの制度での「教育資金」は、学校等(幼稚園、小中学校、高校、大学など)に支払う入学金や授業料、教科書の購入費や修学旅行費や給食費など、教育に必要な費用のほか、「学校等以外の者」に支払う費用も含まれます。

例えば、塾や習い事の費用や学校へ通うための定期代など「社会通念上相当」と認められるものが該当します。

なお「学校等以外の者」に支払う費用については、非課税の限度額が500万円までとなっています。

税制改正で何が変わった?

今回の改正では、口座に資金が残っている間に「贈与者」が亡くなった場合の扱いについて次の2つの変更が行われました。

1.相続税の課税対象となる財産の範囲

改正前は、口座に残額があった場合には、亡くなる3年以内の贈与についてのみ相続税の対象となっていましたが、改正後は3年以内の贈与に関わらず、すべての残額が相続税の対象となりました。

これは節税目的でこの制度を利用するのを是正するための措置と言えます。

ただし改正前も改正後も、「受贈者」が次の3つに該当する場合には残額があっても相続税の対象とはなりません。

・23歳未満
・学校等に在学している
・教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている

2.「相続税額の2割加算」の適用

通常の相続の場合、「配偶者」「直系血族のうち一親等」、以外の人が財産を相続し相続税がかかる場合、相続税額の2割加算の対象となり、税額×1.2が納税額となります。

例えば、おじいさんから孫へ財産を相続した場合が該当するのですが、この制度の残額を孫が相続した場合、改正前は2割加算の対象とはなっていませんでした。

この部分が改正され、通常の相続と同様に2割加算の対象となりました。

このように今回の改正では、この2点についての変更が行われ、相続税の課税対象となる範囲が広くなりました。

本来の目的である、教育資金の贈与のためにこの制度を活用するのであれば、改正後であってもメリットがあると思います。

今回の改正は、単に、贈与から3年経過後の財産についての課税を逃れる、相続税が2割加算されることなく孫などに財産を渡す、といった節税目的での活用を防止する内容となっています。