印鑑がいらなくなる?~令和3年(2021年)度税制改正~

今までは様々な手続きや届出をする時に書類に印鑑を押すのが当たり前でしたが、2020年に閣議決定された「規制改革実施計画」によって「押印原則」の見直しが行われました。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html

・内閣府:「規制改革実施計画」等

これによって、行政手続きや地方自治体で届出などを行う時の「押印廃止」が進められることになりました。

印鑑を押す手間を省くことで手続きの簡素化が図れるほか、オンライン手続きや電子署名の普及促進などによって、印鑑を押す必要がなくなったという背景もあり、規制改革が進められます。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/i_index.html

・内閣府:押印手続の見直し・電子署名の活用促進について

税に関する手続きでも押印が不要となる流れとなっていて、令和3年度の税制改正でも押印義務が見直されています。

どんな手続きで印鑑が必要なくなる?

今回の税制改正では次のような手続きを除き、税務関係書類への押印が不要となりました。

1.担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類
2.相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類

1に当てはまる主なものは、

相続税の物納の申請を行う時などに必要な「所有権移転登記承諾書」や、税金の延納申請や納税猶予の申請を行う時などに必要な「抵当権設定登記承諾書」などがあります。

2に当てはまるものは、

相続税の申告の時に添付する「遺産分割協議書」となります。

実印や印鑑証明書が必要な手続きでは押印が必要ですが、いずれも頻繁に行う手続きではありませんので、多くの手続きの時に行っていた押印が不要となります。

例えば、

年末調整の時に勤務先に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の扶養控除等申告書」、確定申告する時の「確定申告書」や、税金の還付請求を行う時の「更正の請求書」、国税や地方税の各種届出書や申請書、

などへの押印が廃止されます。このような、今まで「認印」の押印で良かった手続きについて押印が不要となります。

ちなみに今回の改正は、令和3年4月1日以後に提出する書類について適用されますが、押印が不要となる書類については、この日よりも前に提出した場合に押印がなくても、

あらためて「ハンコを押して提出し直してください」とはなりません。

今回の改正によって「ハンコを押し忘れた!」ということが減り、手続きや申請をし直すという手間も減るのではないかと思います。

利便性が高まる一方で

余談ですが印鑑といえば、高校を卒業する時に記念品として印鑑をもらい、今では使っていませんが大切に保管をしています。またこの仕事を始めるときにも印鑑を作り、今でも使っています。

あらためて考えると印鑑は暮らしや仕事の中で欠かせないものだったのだと思います。

手続きが簡素化されることで利便性も高まりますが、一方で印鑑を作成・販売している業者の方や関係者の方にとっては死活問題だと思います。

印鑑を押す習慣は大昔からあるようでその文化が消えることは無いとは思いますが、制度の改正をすることで、全体で見ればプラスとマイナスの両方の影響があるのだということをあらためて感じているところです。